Fulvinter

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挑戦ちょうせんに満ちた4つの島

イグドラム

 

ハイル!イグドラムへようこそ!

世界の果はての海岸線かいがんせんを進め。太陽が左に沈しずむまで。霧きりを目指めざし、太陽の石が青く光ったら右へ。夜明よあけまでひたすら真っすぐ進み、そして振ふり返かえれ。

——観光かんこうガイドブック「初心者しょしんしゃのためのイグドラム」より

かつて、魔法の島々イグドラムは、海に映うつる太陽の輝かがやきにも引ひけを取とらぬ美うつくしさを誇ほこっていた。浜辺はまべの細こまかな砂は金のようにきらめき、誇ほこり高き山々は巨神きょしんのようにそびえ、その頂いただきを撫なでる雲と語らいていた。そして花々……ああ、花々よ。
おそらくそれが、私が最も懐なつかしく、そして思い出すのが苦くるしいものだ。大地を彩いろどり、千の色に塗ぬられた花々は、形もまた理ことわりを超え、風にささやきながら花びらを舞まい散ちらせていたのだ。

かつて、冬のあとには春が訪おとずれ、夏は秋へと移うつりゆく季節の巡めぐりがあった。イグドラムの魔法は、季節とともに流れていたのだ……ある春の日、初はつめての綿毛わたげが風に舞まうそのときまでは——白き蠕竜ぜんりゅう・フルヴィンターが、その冷つめたい息を解ひらき放はなつまでは。
厳きびしき冬はすべての命いのちを永遠えいえんの眠ねむりに誘いざない、風は花を奪うばい、木々は葉を落おとし、雪は大地を静しずかに包つつんだ。狡猾こうかつなるフルヴィンターは、恨うらみに駆かられ、勝利しょうりを収おさめたのだ。

しかし今もなお、イグドラムにはひと雫しずくの魔法が——希望きぼうの光が残のこされている。魔法を宿やどし、若さと無知むちがもたらす大胆だいたんさを武器に、4人の若者わかものたちがニヴルの頂いただき、竜・フルヴィンターの巣穴すあなへと向むかう。彼らは先人せんじんたちが成し得えなかった偉業いぎょうを成し遂とげられるか?狡猾こうかつなる敵は、まだまだ爪つめの先に秘ひめた策さくを隠かくしている。この老ふいたものが、彼らのからっぽの兜かぶとに、知恵ちえを少し教えてやらねばなるまい……


イグドラムの島々

ニヴル

ニヴル

竜りゅうの島

イグドラムの最も辺境へんきょうの地、忘わすれられた地にそびえるこの巨大きょだいな氷河ひょうがは、地平線ちへいせんを支配しはいし、ほかのすべての山々を見下みくだしている。

その外観がいかんは氷と古いにしえの岩の塊かたまりだが、内部ないぶにはかすかに秋の面影おもかげを残のこす古き森が隠かくされている。節ふしだらけの幹みきと緋色ひいろの葉を持もつ木々は、太い根を氷と絡からませながらねじれ、草は雪原せつげんのように青白あおじろく、絶たえず吹ふき荒すさぶ氷河ひょうがの風にゆっくりと揺ゆれている。

ヨトゥン

ヨトゥン

太古たいこの魔法に満みちた森の島

最深部さいしんぶの谷にそびえる巨木きょぼくは、千年せんねんの闇やみを宿やどすだけでなく、島そのものを神秘しんぴで包つつみ込こんでいる。

古文書こもんじょには、水面みなもに映うつる影が異世界いせかいを映うつし出すという魔力まりょくを秘ひめた泉いずみや小川おがわのことが記しるされているが、それを確たしかめるために奥地おくちまで足を運はこんだものは少ない。また、同じ文書もんじょは、下草したくさの泥や小石こいしを踏ふみしめたという古代こだいの巨人きょじんたちの文明ぶんめいや、崖の裂さけめや洞窟どうくつの縁ふちから深淵しんえんを覗のぞくカラマツやシラカバが生はい茂しげる濃密のうみつな森のことも語かたっている。

ムスペル

ムスペル

灼熱しゃくねつの火山が燃もゆる島

この島では、かつて火が征服せいふくされたと言われている。闇夜やみよのように黒い岩の間を溶岩ようがんの流れが蛇行だこうし、灼熱しゃくねつの生き物たちが縄張なわばりを見張みはっている。

まるで生きている循環器じゅんかんきのように、その静脈じょうみゃくと動脈どうみゃくはゆっくりと脈打みゃくうち、火山かざんの生の岩盤がんばんを通とおり抜ぬけている。内部ないぶは中庭なかにわや段を形作かたちづくるように削けずられており、そこには古代こだいの鍛冶かじの王国おうこくが広ひろがっている。今では溶岩ようがんで温あたためられた温泉おんせんが、湿気しっけを帯おびた空気を蒸気じょうきに変かえ、エキゾチックな建造物けんぞうぶつの周囲しゅういを暖あたためている。

ニダヴェル

ニダヴェル

深淵しんえんへと沈む島

イグドラムの深海しんかいにその基盤きばんを沈しずめるこの島では、山々が逆さに生えている。その空洞くうどうの内部ないぶでは、今もなお無数むすうのハンマーが岩を穿うがち、壁を彩いろどる宝石ほうせきの暖あたたかな輝かがやきに焦こがれる音がこだましている。

かつて賑にぎわった鉱山こうざんも、今は昔日せきじつの面影おもかげはない。捨すてられた狭せまい坑道こうどうでは、時間が深淵しんえんの虚無きょむを塵ちりで埋うめていく。錆さびついた巧妙こうみょうな機械きかいたちは、永遠えいえんの意思いしの火花ひばなにとらわれ、今も絶たえることなくその使命しめいを果はたし続つづけている。


語源ごげん

「イグドラム」という言葉ことばは、巨人きょじんたちの古語こごから伝つたえられたものであり、その詳くわしい意味いみはあまり知られていない。以下いかの要素ようそから成なるとされる。

  • イグは、動詞どうし「イグス(またはウグス)」に由来ゆらいし、「沈しずむ、没もぐる」を意味いみするが、その最も詩的してきな表現ひょうげんでは「隠かくす、偽いつわる」をも意味いみする。
  • ドラは、「ドラル」から。これは「金床かなとこ」を指さすが、文字通もじどおりには「大きな鉄てつの岩」を意味いみし、象徴的しょうちょうてきには「非常ひじょうに忍耐強にんたいづよい、あるいは主体性しゅたいせいに欠かける人」を表あらわす。
  • ムは、接尾辞せつびじ「-ム」であり、海や水辺みずべに洗あらわれる土地を指さすために用もちいられる(「岸辺きしべ、海岸かいがん、水際みずぎわ」)。

我われは天あまより落ちし雪崩なだれ、
季節きせつの黄昏たそがれ、
終末しゅうまつの先駆者せんくしゃ、
そして三度の冬。